33人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
「…ちょっと待ってろ」
「…え?」
水野はそれから黙ってポケットから携帯を出した。ボタンを押し、そして携帯を耳にあてる。
…電話?
「あーもしもし香奈美ー?」
<あれぇ?康太先輩♪あ、今から来ますか?丁度皆で遊んでるんですよ★>
またこの人…
「水野…行って来なよ」
「ちょっと待てって」
「……」
水野は一息ついて言った。
「あ、香奈美、悪いけど俺行けねーわ」
<えぇ…なんでですかぁ?>
「今彼女とデート中だから」
ドキッ…
か…のじょ、って…
水野が続ける。
「てか前々から思ってたんだけどさ、香奈美うざいよ」
<こっ…康太先輩…>
「だからもう連絡すんな。委員会もやめるから」
<っ…!私は康太先輩が好きなんです!彼女なんか私が…>
「だまれ!!舞花になんかしたら許さねぇからな!倍にして返してやる!!」
ビクッ
『パチンッ』
「ったく…」
水野は携帯を閉じた。
私は今の声と表情に驚きを隠せない。
それでも水野はこっちを見て、優しい笑顔を見せてくれた。
「な?言っただろ。俺はおまえが好きなの。遊びだと思った?」
水野…!!
じんわりと目頭が熱くなる。
「ごめ…っ」
「あーもーまた泣く気か?」
「だって…う…っ…」
「…お前が魅力無いとか、可愛く無いとか…そんなん関係ねーじゃん。それに…俺は、舞花はすっげー可愛いと思ってる」
きゅん…
「み…ずの…」
本当は何もかも分からなかったんだ。
心がズキズキ突かれて、病気みたいに治らなくて…
それでも…
「……舞花」
「ぇ…?」
「キスしていいか?」
「……」
私は、もう逆らえない。
水野にも、自分の気持ちにも…
「いいんだろ?」
私を覗き込む目…水野は私を好きでいてくれる。
そして私も、それに応える。
「……うん」
私達は、同じ気持ち。
そう考えたら…不安だし…何かそわそわするけど、水野となら大丈夫って、はっきりと言えるよ?
『ちゅ…っ』
「んっ…ふ…」
とろけそうな眼差し。
初めての大人のキス。
「舞花…」
「……ん?」
「好きだ」
「……私も、水野が…っ」
あー…言えない…
「ほら、ちゃんと言えよ」
「…………好き…」
桜散る季節。
私の初恋、今幕開け。
最初のコメントを投稿しよう!