第三話 水野の噂

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「…ちょっと待ってろ」 「…え?」 水野はそれから黙ってポケットから携帯を出した。ボタンを押し、そして携帯を耳にあてる。 …電話? 「あーもしもし香奈美ー?」 <あれぇ?康太先輩♪あ、今から来ますか?丁度皆で遊んでるんですよ★> またこの人… 「水野…行って来なよ」 「ちょっと待てって」 「……」 水野は一息ついて言った。 「あ、香奈美、悪いけど俺行けねーわ」 <えぇ…なんでですかぁ?> 「今彼女とデート中だから」 ドキッ… か…のじょ、って… 水野が続ける。 「てか前々から思ってたんだけどさ、香奈美うざいよ」 <こっ…康太先輩…> 「だからもう連絡すんな。委員会もやめるから」 <っ…!私は康太先輩が好きなんです!彼女なんか私が…> 「だまれ!!舞花になんかしたら許さねぇからな!倍にして返してやる!!」 ビクッ 『パチンッ』 「ったく…」 水野は携帯を閉じた。 私は今の声と表情に驚きを隠せない。 それでも水野はこっちを見て、優しい笑顔を見せてくれた。 「な?言っただろ。俺はおまえが好きなの。遊びだと思った?」 水野…!! じんわりと目頭が熱くなる。 「ごめ…っ」 「あーもーまた泣く気か?」 「だって…う…っ…」 「…お前が魅力無いとか、可愛く無いとか…そんなん関係ねーじゃん。それに…俺は、舞花はすっげー可愛いと思ってる」 きゅん… 「み…ずの…」 本当は何もかも分からなかったんだ。 心がズキズキ突かれて、病気みたいに治らなくて… それでも… 「……舞花」 「ぇ…?」 「キスしていいか?」 「……」 私は、もう逆らえない。 水野にも、自分の気持ちにも… 「いいんだろ?」 私を覗き込む目…水野は私を好きでいてくれる。 そして私も、それに応える。 「……うん」 私達は、同じ気持ち。 そう考えたら…不安だし…何かそわそわするけど、水野となら大丈夫って、はっきりと言えるよ? 『ちゅ…っ』 「んっ…ふ…」 とろけそうな眼差し。 初めての大人のキス。 「舞花…」 「……ん?」 「好きだ」 「……私も、水野が…っ」 あー…言えない… 「ほら、ちゃんと言えよ」 「…………好き…」 桜散る季節。 私の初恋、今幕開け。
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