面会

2/4
477人が本棚に入れています
本棚に追加
/630ページ
 一日に一度、一回十分、一組三人まで。これが拘置所に於ける、未決収容者に与えられた面会規定だった。 「何か欲しい物は、あるかい」  透明なアクリル板の向こうに座る女が、そう云った。傍らには、国選弁護人の男が一人、彼女に付き添っていた。 「何もいりません」  そう答える彼に、女は「そうかい」と答えるだけだった。こんな会話にも為らない様なやり取りをしたのは、これが何度目だっただろうか、と彼は、何処か他人事の様に感じていた。
/630ページ

最初のコメントを投稿しよう!