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「これは出しちまって、いいんだね」
女が取り出した、緑色に縁取られた一枚の薄紙。彼は既に、その紙に署名を書き入れ、捺印していた。
「まだ、出してなかったんですか」
それは彼からの提案だった。彼の妻に。彼らの子供に。そして、これから産まれて来る彼らに授かった新しい命に『人殺し』の名字を名乗らせない為に、自ら言い出した事だった。
「馬鹿な男だ」
そう言い残し、妻の母親は面会室から出て行った。
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