静夜

23/23
477人が本棚に入れています
本棚に追加
/630ページ
 奈美枝を女として接してくれなくなった夫との、日々。寂しさに鬱ぐ感情。自身の存在する意味にさえ、疑問を憶える毎日。それを変えてくれたのが、村田だった。  奈美枝はそれ以降も、村田との逢瀬を重ねた。村田は奈美枝を女性として扱い、奈美枝は村田の中に雄を見ていた。そうする事で、お互いが人として居られる思いがしていたのだ。  奈美枝にとって村田は、自身が女で在る事を再確認させてくれた、謂わば恩人の様な存在だ。その恩に報いる為にも、奈美枝は村田の意に従ったのだ。それが法に触れる事と理解していても。  静かな夜。今になって、涙が溢れ出して来た。
/630ページ

最初のコメントを投稿しよう!