兄妹

2/13
477人が本棚に入れています
本棚に追加
/630ページ
 遠くにサイレンの音が聴こえた。東西に伸びる商店街の向こうに、一瞬だけ救急車の赤色灯が走り抜けるのを見て取れた。両サイドに列なる店々のシャッターは、何処も赤錆が目立ち、この通りの時代背景が窺える。街路燈のオレンジ色掛かった灯りが、それをなおの事、引き立てていた。 『悪かったね。帰りにこれで、ジュースでも飲んで』と横田会長から貰った五百円玉を自動販売機に投げ入れ、市田 浩也はオレンジジュースのボタンを押した。 「それ、誰が飲むのよ」  取り出し口に『ガタガタン』と音を立てて顔を出したアルミ缶を指差し、立花 亜香里がそう告げた。
/630ページ

最初のコメントを投稿しよう!