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遠くにサイレンの音が聴こえた。東西に伸びる商店街の向こうに、一瞬だけ救急車の赤色灯が走り抜けるのを見て取れた。両サイドに列なる店々のシャッターは、何処も赤錆が目立ち、この通りの時代背景が窺える。街路燈のオレンジ色掛かった灯りが、それをなおの事、引き立てていた。
『悪かったね。帰りにこれで、ジュースでも飲んで』と横田会長から貰った五百円玉を自動販売機に投げ入れ、市田 浩也はオレンジジュースのボタンを押した。
「それ、誰が飲むのよ」
取り出し口に『ガタガタン』と音を立てて顔を出したアルミ缶を指差し、立花 亜香里がそう告げた。
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