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車は山間を抜け、田畑を幾つか通り越し、緑色に塗られた高速道路の乗り入れ案内表示板が掛かる地点に差し掛かった。
「この辺で、蕎麦でも食って行くか」
「すいません。俺、蕎麦は苦手なんです」
「蕎麦は嫌いかい。それじゃ、ゆかりさんの奢りで鰻だな」
神山はそう云うと、鰻屋の駐車場へと車を滑り込ませた。
平日の昼前とあってか、店内は空いていた。基より住宅街やオフィス街からかけ離れた幹線道路に佇む店に、客足が向くかは疑問だったが。
鰻のタレの焦げる香ばしい匂いを嗅がされる中、少し待たされて出された重箱は、輝いて見えた。
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