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鰻もさる事ながら、銀色に耀く米の飯一粒一粒が、こんなにも美味い物だったと改めて思い知らされる。刑務所の麦の混ざった飯ばかり食べさせられていたせいか、この飯は噛まずとも飲み込む事が出来るくらいに、柔らかく感じた。
「余程、あそこのご飯が不味かっんだねぇ」
ゆかりは彼の、重箱を抱えてかき込む様な動作を観て、呆気に取られている。知らず内に、浅ましく箸を動かしていた事に気が付き、彼は動きを止めた。
「気にする事はねぇ。誰だってムショから出て来たばかりなら、そうなるもんだ」と神山は、彼の為に鰻重を一人前追加した。そして「流石に本場浜名湖の鰻は、美味いな」と自らも、彼を真似る様に鰻を頬張った。
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