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小高い丘の作りをしたその場所を、三人は歩いた。似た様な墓石が整然と並び、時折、線香の香りが風に乗って鼻先を擦り通る。その内の一つの前に来た時、ゆかりは歩を止めた。
「ここだよ」
『立花家の墓』と名書きされた黒御影の墓標の脇には、二歳でこの世を去った幼子の名が刻まれていた。
「先客が居た様だな」と云う神山の視線の先には、未だ煙り立つ線香が供えられていた。
彼は誰を気にする事もなく、その場所にひれ伏すと、声を上げて泣いた。許してくれ、と云いながら……。
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