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「浩ちゃん、あたし夕御飯作りに部屋に戻るから、サボってないで早く終らすのよ」
商店街で買い揃えた食材の詰まったトートバッグ。長ネギの突き出たそれを重そうに持ち、亜香里は部屋の扉へと向かった。
その背中へ、浩也は声をかけた。
「なぁ、雷鳥って知ってるか」
「なによ、突然に」
「知ってるか、どうかだよ」
「なにかの本で読んだ記憶があるから、多少は知っているけど、あたしあの鳥嫌い」
「嫌い?なんでさ」
「雷鳥のオスって子育てしないくせに、一夫多妻なんだもん。浩ちゃん、見習っちゃダメよ」
亜香里は笑いながらそう云うと、浩也を置き去りにして出て行った。
浩也は携帯電話を取り出すと、鳥獣図鑑のサイトを開き、雷鳥を調べた。そこには『一夫一妻制もしくは一夫多妻制』と書かれていた。
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