通夜

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 玄関の扉が開く速度というものは、扉の外にどんな人物が控えているかによって、開く速さが違うものなのかもしれない。  そこに逢坂 義之のような人間が立っていたなら、扉はゆっくりと、尚かつ開く隙間は顔がわずかに望める程度に、他ならなかった。  しかしながら今日の午後から訪ね歩く先々では、待っていましたとばかりに、玄関の扉は勢いよく開いた。 「おじいちゃんからもおばあちゃんからも、これと行って収穫のある話しは出て来ませんね。同じ話しを何度も繰り返して云って来るから、聞かされるこっちは疲れちゃいますよ」  隣を歩く新堂 俊介は、つまらなさそうに話した。
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