通夜

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 地取りというものは本来、こういった無意味とも取れる話しをひたすら聴いて回るものだ。それは逢坂が刑事になった時から、十分に理解している。  準キャリアの新堂が警備部や総務部などを望まず、刑事部に自ら進んでおきながら愚痴をこぼすという事は、未だ刑事の仕事を理解していない証だ。  しかしながら逢坂とて、老人達のオウム返しのような話しに、些かへき易し初めている。 「まぁ、そう云いなさんな。彼らだってガイシャ(被害者)が何故、あんな形で死ななければいけなかったのか、知りたいのさ。だから一生懸命、自分たちの知っている事を思い出しながら、話してくれているんだろう」  この台詞は新堂に宛てたというよりも、どちらかというと自分自身に言い聞かせたものなのだろう。
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