通夜

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 新堂が望み、逢坂が断を下した。  キャリアなら最前線の刑事部でなく、総務部などの一歩も二歩も下がった所で出世競争を繰り広げていたなら、間違いなくそれなりの地位に登りつめるであろう。  無論、刑事部に席を置き、刑事として活動しても、国家公務員である新堂にとって、地位を築き上げる事は可能だ。だが他の部署と比べ、出世競争から脱落するリスクは比べるまでもなく高い。ましてやデカ部屋暮らしの刑事達の捜査手法を取り入れたなら……  新堂はそれを承知の上で、刑事の道を歩み進めている。ならば逢坂は背中を預け、預かる者として、フォローしてやるしかないだろう。せめて新堂が県警本部のポストある席に座る、その日まで。 「坂さん、ちなみに僕はキャリアじゃなくて、準キャリアですよ」 「そんな事は、解っている!」  今日はもう帰ろう、と逢坂は思った。
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