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 道幅の狭い商店街。軒下から突き出た巻き上げ式の日差し除けが、輪を掛けてこの通りを狭く見せる。惣菜の醤油の甘辛く煮詰まった香りや、揚げ物のパン粉をこがした匂いが、道行く買い物客を店先に誘う。大根やキャベツが山の形に盛られ、鮮魚には砕かれた氷が、残雪の様に掛けられていた。  脇道を一本入ったなら、そこには小さな道祖神が奉られていたり、老婆が一人で店番をする駄菓子屋が在ったりする。車が入る事の出来ぬ裏通りには、今もポンプ式の井戸があり、そこで暮らす人達が、水撒きなどの生活用水として利用していた。
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