現着

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 正に突風だった。『A-1 出口』と書かれた階段を登っていると、地の底から吹き上げる凄まじい風に背中を押され、地上へと吐き出された。まるで自身が子供の頃遊んだ、空気鉄砲の玉にでもなった思いがする。  近所の竹やぶに分け入って手頃な竹を物色し、友達と水鉄砲や空気鉄砲を作ったものだ。竹の節の中央に小さな穴を開ければ、水鉄砲になり、節以外の所で切り落として、濡らした古新聞を丸めて詰め込めば、空気鉄砲になった。  隣を歩く男にそんな事を云ったなら『何ですか、それ』とにべもない事だろう。
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