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太陽を背にした人影が小走りに近づくと、薄い褐色の肌色の手から瓶を奪い取り、透明なリップの塗られた唇に、すかさず呑み口を付けていた。
立花 亜香里のとったその行動で、市田 浩也は複雑な思いにかられた。
亜香里が浩也の恋人だったなら、それはいとおしく思えただろう。だが二人は、そんな関係にない。浩也が亜香里と初めて出会ったのが三年前だから、幼なじみとも言えない。当然の事ながら親戚でもなかった。
「浩ちゃんが駄菓子屋さんにいるなんて、珍しいね」
「店開けないし、暇だったからな」
「そっかぁ~、暇かぁ。それじゃ、買い物に付き合ってよ」
亜香里はラムネを浩也に返す事なく飲み干して、店の脇に置いてあったケースに戻すと「手がべたつく」と云って、井戸のポンプに手をかざした。
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