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「浩ちゃん早く、水出してよ」
前屈みになって蛇口に手をかざす亜香里の制服のスカートの裾から、白い下着がちらりと見えて、浩也は顔が赤くなるのが分かった。西陽をまともに受けていたから、それは悟られていない筈だったが。
ーー短すぎるんだよ。
亜香里は井戸水で手をすすぐと「交代ね」と、ハンドルを上下に動かしている。蛇口から勢いよく迸る井戸水を両の手のひらで受け止めると、浩也はその水を火照った顔にぶつけた。
夏は冷たく冬は温かい井戸の水は、この時期中途半端なものに思えた。それは自分と亜香里との、何とも表現しがたい関係に似ている様な気がした。
ポケットに突っ込んだ指先に、ハンカチの感触がない事を悟ると、浩也は袖で顔を拭こうとした。
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