相思

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 亜香里は他の女の子と同様に、髪飾りやキーホルダーなどの小物を手に取っては、微笑んだり首を傾げたりしている。浩也はそんな様子を、少し離れた場所から観ていた。  手持ちぶたさの浩也にとってこの店の商品レイアウトは、駄菓子屋のそれとあまり変わらない物に映った。  こういった店は人を選ぶ。駄菓子屋が子供達の社交の場である様に。雀荘には子供が似つかわしくない様に、この店には浩也の様な男は合わないと。  自分の居場所がない様な気がして、何気なく壁際に沿って歩いた。レジに近いその場所にブロックに似た塊が三つ、ピラミッド状に置かれている。棚に貼られた値札の脇に、寄せ書きが添えられていた。  それには『カービングに適したソープです』と書かれ、その横にはご丁寧に彫刻刀まで売られていた。
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