相思

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ーーソープって、石鹸の事か?  小物の店に置かれていた石鹸にいささかの興味が湧いて、浩也はそれを手に取った。フィルムに包まれてはいるが、それでも香りは漏れている。 「興味、あるの?」  耳元で囁かれた様な、本当はそうではないのだけれども、優しい女性の声の問い掛けに、浩也は一瞬固まった様に動けなかった。 「これはね、東南アジアから仕入れたのよ」  三十過ぎだろうその女性は、この店の二代目のオーナーだった。元々は文房具店だったのが、先代の店主が高齢の為に店じまいする所を孫娘が店を譲り受け、このファンシーショップに作り替えていた。
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