相思

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「大人の女性、ですか」 「そうよ。日本も十六歳になったら、女の子は結婚出来るの。彼女さん、ピアスが欲しいんでしょう。それって大人を意識していると思わない?」 「まぁ、なんとなく」 「それだけ特別な日のプレゼントなのよ。真剣に考えてあげなくちゃ、駄目じゃない」  浩也にとって、誕生日は歳を一つ重ねるだけの事でしかなかった。高校を卒業するまで暮らした施設では、月に一度の誕生日会があった。その月に誕生日を迎える子供達を一度に祝ってしまおうという、儀礼的な行事だ。  大人達はそこに暮らす子供達に、少しでも良い思い出を作ってやろう、という配慮なのだろう。だが浩也にとってそんな儀礼的な行事に、特別な思いなどなかった。
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