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そんな事だから誕生日にこれといった思い入れを持たない浩也は、この女性オーナーの話しを聴いて、亜香里がむくれて出ていった事を理解した。
「金額よりも、気持ちよ」
男が一人でいるには、あまりにそぐわない店だ。それでも浩也はピアスの置かれた場所から動かずに、一つ一つに目を通した。『気持ちよ』と云ったオーナーの言葉に触発されたのもあるが、やはり相手の、それも女の子の気持ちを理解してやれなかった事への、詫びの気持ちがあったから。
「これに決めた」
紫色の花を模したピアス。以前寝惚けて亜香里の髪を掴んだ時に、ラベンダーの香りを嗅いだ。その印象が強く残っている。このピアスの花がラベンダーを模した物なのかは解らないが、紫色の花がラベンダーを連想させたからだった。
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