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「きっと、喜んでくれるわね」
オーナーはそう云うと「これは私から彼氏さんへの、お近づきのしるし」と、ソープの塊を紙袋に入れて寄越した。
「そんな、悪いですよ」
「遠慮なんかしちゃ、ダメよ」
そう云って、オーナーは微笑んだ。
ーーなんだよ、それ!
彼女の最後の一言は、明らかに浩也を子供扱いしたものだ。恋とまではいかないにしても、歳上の女性に抱いた淡い心は、相手に悟られる遥か以前に、かき消されてしまった。
店を出ると、辺りはすでに暗かった。そんなに時間をかけたつもりはなかったが、人は真剣に事を成そうとすると、時間を忘れてしまうものなのだと、思い知らされたみたいだった。
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