現着

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 地取り、要するに聞き込みだ。闇雲に地取りを掛けても、ここに居るのは、この場所で何が起きたのかを知りたがっている者達ばかりだ。この中に何かを目撃した者が居たとして、衆人環視の下で聞き取りを行ったとしても、相手は萎縮するか興奮状態に陥りやすい。それでは重要な証言も、取りこぼしてしまうかも知れない。  群衆は、時間を置けば自然と散って行く。それから目撃者捜しをしても、遅いという事は無い。何かを語りたがっている人間は必ずと云って良い程、この場所に残るか、若しくは後から現れるものだ。  逢坂は長年の観点から、新堂を制したのだ。
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