現着

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 事件現場となった民家の板塀を背に、二人の若者が先に現地到着していた捜査員達と話しをしている。逢坂は歩み寄り、その捜査員の一人に声を掛けた。 「お疲れさん」  相手は逢坂と知るや「坂さん、早かったじゃないか」と軽く手を挙げた。  宮田 幸一朗。逢坂と同じ一係の刑事だ。逢坂より二つ歳上の、五十に待った無しの刑事だが、階級は巡査長だ。二人は仕事以外にも私生活で、家族ぐるみの付き合いをしている。妻を三年前に亡くした逢坂は、高校三年生の娘と二人暮らしだった。宮田は、特にその妻は、逢坂の娘を可愛いがってくれている。彼ら夫婦に子供がいないのが、最たる理由なのだろう。
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