記憶

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「それで、どういった按配なんだよ」  辰男は事件のあらましを聞きたくて、仕方無いといった様子だった。 「どういった、と言われても」  一緒に行った亜香里は雀荘に戻るなり、祖母の立花 ゆかりに抱き着いて、わんわんと泣き出す始末。村田の家の前で、刑事に話しを訊かれていた時はこんなにも取り乱しはしなかった。やはり身内の顔を、それも『お婆ちゃん』の顔を見て、心細い気持ちが一気に溢れ出したに違いない。そういう相手がいない浩也は、亜香里が羨ましくさえ思えた。
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