記憶

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 老人達のあの表情を観ているのは、流石に辛い物がある。彼らとは、高校に入学してからの付き合いだから、既に三年の月日が流れている。これ迄にも何人かとの別れはあったが、それは病気が原因での離別だった。  浩也は三歳の頃から、独りだった。親に捨てられ、児童養護施設で育った。六畳の部屋に、三段式の木の枠組みだけのベッドが二つ。自分に与えられたスペースは、そのベッドの上だけだった気がする。共有空間にはテーブルもあったが、周りでは常に子供達がはしゃぎ廻り、赤子の泣き声も途絶える事を知らなかった。
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