記憶

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 ベッドの上は、胡座を掻いただけで頭がぶつかる。そんな環境の中、背を丸めて本を開き、鉛筆を握った。大した娯楽は与えて貰えず、夕食後二時間だけ許されるテレビ観賞が、最大の娯楽と云って良かった。  高校生になればアルバイトも許されたが、稼いだ賃金は全て没収され、卒業までその金を手にする事は出来ない。何故なら高校卒業と同時に、施設を出て行かねば為らないからだ。その時になって初めて、蓄えられていた金を渡される。それが世間に放り出された後の、当座の資金となるのだ。浩也はその金を持って、高校一年の頃から世話になっている、この雀荘に転がり込む様に居着いた。
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