記憶

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 ゆかりは何も、浩也ばかりの面倒を見ていた訳では無い。此処に集った老人達も、行き場の無い者達ばかりなのだ。  ある者は、仕事を引退した後に手に入れた『自由』という時間を持て余し、途方に暮れてしまっていた。  ある者は、炊事、洗濯、家事にと、家族の為に過ごした『日常』を、嫁という立場の人間に奪われてしまい、自身の存在理由を見失ってしまっていた。  またある者は、金銭に固執した人生を送った後、自身の周りに作り上げた『人間関係』が、ただそれだけに依って構築されていた事に気付かされ、落胆してしまっていた。
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