記憶

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 ほんの僅か、転た寝をしてしまったと思ったが、時計の針は一時間ほど過ぎた様だ。 ――いけね。  またゆかりにどやされる、と思いながら、浩也はベッドから起き上がった。  久しぶりに見た夢だった。あれは紛れも無く、母親の背中だ。しかし浩也は、その母親の記憶が殆ど無かった。唯一憶えがあるのが、石鹸の香りのする背中だった。  それは、村田の家に行きさえしなかったなら、思い出す事も無いであろう記憶だった。
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