第一章 覚醒

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エルは農業が嫌いだ。何故嫌いなのか、と言うのは本人にしか分からないが…とにかく働くと言う意欲が全く無いのは確かだ。 だから彼は毎日わざわざ危険なこの森に足を運んで、狩りをして獲物を売り生計を立てている。 「…お。」 樹の枝から足を投げ出して座っていたエルが何かに気付いたのか急にパッと中腰の格好になる。彼の目線の先には… (来た、『スライム』だ。) スライム、そう呼ばれる生物が地面を震えながら移動していた。 『スライム』それはこの世界に存在する魔物の一種。厳密に言うと魔物と動物は違うのだが…解説すると長くなるので割愛させて貰う。 スライムは弾力性のある体をした水たまりの様な魔物だ。水たまりの色によって種類が変わり、特性や習性、生息地帯が違う。ちなみにエルの見ているスライムは緑色、一般的にグリーンスライムと呼ばれる魔物だ。 スライムは獲物に飛びかかり、痛めつけて弱らせた後獲物を体内に取り込み捕食する習性がある。 とりわけ凶暴、と言う訳ではないが普通の人間にとっては危険な存在だ。だがスライムの体は絶妙な食感をしていて、高級…とまではいかないが中級食材として扱われるので狙う人間も少なくは無い。 (助かった…あれを仕留めれば数日は凌げる。) 欲望のこもったギラギラした目つきで罠片手にスライムを凝視するエルも、食材としてスライムを狙う人間の一人であった…
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