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「・・・まぁいい。明日、昼前にここの下で待ってろ。じゃあな。」
「え、あの、診察は。」
「どこも悪くない。」
そういってその男は出て行った。
なんだったのだろうか。
「人に勝手にキスしておいて・・・。」
思い出して口を触ってみる。
「初めて・・だったな・・。まぁいい。次の方ー!」
とにかく、今は診察だ。
その後、キスされたことなんかすっかり忘れていた。
診察が終わり、夜遅く家路につく。
そういえば、明日、あいつと会うんだよな。
「いったいなんだったんだか。」
そんな独り言をつぶやきながら、玄関の鍵穴にさした鍵を回した。
ドアを開き、中に入る。
生活感のかけらもない、この家に。
2年前に、父親が他界し、母親もその後に病死。
兄は、海外で医師として働いている、それも8年前から。
今、俺は一人だ。
そして今日、あの男が来たのだ。
「初めての変化、かな。」
今までの人生で最大の変化。
でも俺はなるように生きてきた。
そしてこれからも。
冷蔵庫をあけ、ペットボトルのミネラルウォーターを取り出して、飲んだ。
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