二章 死地へ赴く

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本能寺の手前で織田信忠らは馬を止めた。馬に乗っているのはほんの数名であり、その他の自分の足で走っている者達が追い付くまで待たねばならない。一刻を争う急事なのだが、ただやみくもに突っ込むだけでは犬死にで終わってしまう。 おそらく万を超えているだろう敵に突撃するのだから、隊列を組み、一点集中で囲いを突破し、素早く信長を見つけた上でもう一度包囲を破って脱出しなければならない。 村井貞勝は考えた。 「(上様をお救いするのは不可能やもしれぬ…。さらにこの上、信忠様までもお亡くなりになられれば、跡目をめぐって騒動が起き、織田家が二分する可能性も…。このまま信忠様だけでも京よりお逃がしすれば、少なくともかような心配はなくなる)」 明智の兵に気付かれてからでは信忠を逃がすことさえも難しい。しかし、今の内ならばまだ…。 貞勝は意を決し、逃げるよう進言すべく信忠の方へ向き直った。
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