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信長に見つめられているだけで背中に冷たい汗が流れる。それでも光秀は負けじと信長を睨み返した。恐るべき精神力である。少しでも心に隙を見せれば、たちまち闇に呑み込まれてしまうだろう。それほどまでに信長の瞳は深く、冷たい。
不意に光秀は、信長を睨みつけたまま腰の刀を抜き、天に突き上げた。そしてそのまま刀をゆっくり下ろして切っ先を信長の首に向け、大音声をあげた。
「敵は本能寺にありッ!! 帝をさげすみ、神仏をないがしろにし、さらには領民たちを苦しめ、戦となれば例え女子供であっても容赦なく殺戮する織田信長の魔王のごとき悪逆非道ぶりッ、この明智日向守光秀、もう黙って見過ごすわけにはいかぬッ! かくなる上は、我等明智軍一丸となり、天に代わって魔王が首、頂戴いたすッ!!」
そしてついに光秀は下知した。
「皆の者ッ、かかれッ!!」
時刻は午前三時を回ったところであった。
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