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ある一室。
「アル、今月分を。」
はい、報告しますとそれに答える怪しげな少年。
「今年に入ってからは前年度と比べて揺らぎが低く、3月分のデータも比較的安定しています。例年通りならば今年も危険域では無いとのことです。」
「なるほどね。で、君自身はどう見てるのかな?」
「自分ですか?」
「そうそう。一番身近で見てきた君はどう思う?」
戸惑いを見せる少年に、思考を促す上司と思われる男性。
少しの間のあと、
「そうですね、自分は…自分はデータ通り心配はないと、そう思っています。」
少し言葉を詰まらせながら少年は言う。それを見た男性は曖昧な表情をしたが、そのまま話題を移した。
「アル、準備は?」
「はい。アズマ全域に施してあります。」
「解消は出来そうかな?」
「今の自分の力では…とても。」
「そうか…」
不意にドアを叩く音がして、彼らの間に妙な空気が流れた。だが、男性は意に介さずその空気を断ち切る。
「お?きたかな?」
「…誰です?」
「今年からこの任務、二人体制にしようと思っていてね。その協力者。」
「…………」
どうぞー、と少し張った声を出し、扉を叩く主を迎える男性。それとは対照的に物静かな少年は少し不満げだ。
「急になってごめんね、昨日決まったばかりで。」
「いえ、それはいいのですが…。」
「………とりあえず彼女が来てからね。」
扉が開き、彼女が入室した。
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