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道幅が大きく、人通りの少ない閑静な住宅地には小鳥のさえずりがよく響く。
裏山にも軽く朝靄がかかり、川のせせらぎ聞こえる気持ちのよい朝。
程よく自然と調和したこの町の、なだらかに傾斜がかった見晴らしのいい土地に彼の家はあった。
「……ス-……」
洋式の寝室で、物と言う物が見当たらず生活感がまるでないようなこの部屋。
その部屋のベッドに彼は横たわっている。
「…………ん…」
時間が来たのか覚醒していない頭を緩やかに使いつつ、むくりと起き上がる少年。
目に少しかかっている前髪を軽く払い、部屋の扉に向かいベッドから歩を進めた。
そしてそのまま扉を開けると、ひと二人分くらいの通路と一階に通ずる階段。
小さなあくびをしつつ、彼はそのままゆるりと下に降りて行った。
ここで彼の素性を話しておこう
彼の名はタキオン。
この世界では珍しい黒き髪を持ち、この世界では特に珍しくもない紅の瞳を持つ普通の少年。髪は前髪が目にかかるくらいには伸びている。
身長と容姿については、特筆する事はなく平均的。
歳は17、今日から"魔法教育高等学校ルーク"の二年生となる学生である。
~ 一時間後~
長年の一人暮らしで培った慣れた手際で準備と食事を済ませ、家から出た。
ここから学校までの道のりは、坂の一番上にある家から下の駅まで歩いて20分。そこから電車で学校敷地内の駅まで40分。校舎に入るまでだともう少しかかるが、おおよそ一時間で学校までは到着する。
加えて、行きは下り坂なので足取りが軽い。
「……いい天気だ。」
と思わず口にしてしまうほどに今日はよく晴れている。快晴だ。登校日初日としては気持ちのいいくらいの空で、雲が一つも無かった。
そんな心地よい眩しさを受けながら、歩道を進んでいく。
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