有家先生と???

33/34
50245人が本棚に入れています
本棚に追加
/592ページ
「いやいやいやいやいや・・・。そんなことないです・・・。いやいやいやいやいや・・・」 必死に否定する瑞穂。 有家とみずほがそれを見て笑った。 「ごめんね、この人やたら偉そうで」 今まで黙っていたみずほが口を開く。 「ええっ?!僕、偉そうだった?」 「終始上から目線で、私は気分が悪かったわ」 「うっ・・・」 みずほの辛口すぎる言葉には、どうやら有家は何も言い返せないらしい。 有明がぶっと吹き出す。 「ご、ごめん・・・そんなつもりはなかったんだ・・・」 「あはは、大丈夫です。そんなこと思ってないですって」 しゅんとする有家を瑞穂が笑いながら慰めた。 そんな瑞穂に、みずほが優しく笑いかけて言う。 「先生だからって遠慮しなくていいのよ。立場を利用して何かするようだったら私に言ってね」 「ちょ・・・、僕はそんなことしたことないよ・・・」 「あははは!」 有家にはツンと冷たい視線を向けるのに、他の人にはふんわりと笑いかけるみずほを見て瑞穂はようやく、ずっと感じていた何かが明らかになった。 「・・・ああ、そっか。似てるんだぁ」 ぽつりと独り言のように呟いた瑞穂を見て、有明とみずほが首をかしげる。 「ふふ、有家先生。私わかっちゃいましたよ。私達のことを気にかけてくれたの、立場が同じだったってことと、名前が同じってだけじゃないでしょ?」 有家が少し目を見開くと、ニヤッと笑った。 瑞穂は、キョトンとする有明とみずほを交互に見比べる。 (よく似てる) 伏せ目がちでまつげの長い目も、ふわふわした茶色の髪も、そして性格も。 「だからね、正直運命感じたんですよ、僕」 偶然にも自分の妻と同じ名前の女子高生。 その女子高生と付き合う、妻と共通点の多い教師。 偶然にもそのふたりと同じマンションになり、そのふたりが、自分と同じように教師と生徒で恋愛をしている。 とても他人事とは思えなくて、関わりを持ちたくて。 有家がふたりに構う動機はそれだけだ。 有明はそんな有家の心境など知らず、何を企んでいるのかと疑ってばかりいた。 だかとてもシンプルなことだったのだ。
/592ページ

最初のコメントを投稿しよう!