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「いやいやいやいやいや・・・。そんなことないです・・・。いやいやいやいやいや・・・」
必死に否定する瑞穂。
有家とみずほがそれを見て笑った。
「ごめんね、この人やたら偉そうで」
今まで黙っていたみずほが口を開く。
「ええっ?!僕、偉そうだった?」
「終始上から目線で、私は気分が悪かったわ」
「うっ・・・」
みずほの辛口すぎる言葉には、どうやら有家は何も言い返せないらしい。
有明がぶっと吹き出す。
「ご、ごめん・・・そんなつもりはなかったんだ・・・」
「あはは、大丈夫です。そんなこと思ってないですって」
しゅんとする有家を瑞穂が笑いながら慰めた。
そんな瑞穂に、みずほが優しく笑いかけて言う。
「先生だからって遠慮しなくていいのよ。立場を利用して何かするようだったら私に言ってね」
「ちょ・・・、僕はそんなことしたことないよ・・・」
「あははは!」
有家にはツンと冷たい視線を向けるのに、他の人にはふんわりと笑いかけるみずほを見て瑞穂はようやく、ずっと感じていた何かが明らかになった。
「・・・ああ、そっか。似てるんだぁ」
ぽつりと独り言のように呟いた瑞穂を見て、有明とみずほが首をかしげる。
「ふふ、有家先生。私わかっちゃいましたよ。私達のことを気にかけてくれたの、立場が同じだったってことと、名前が同じってだけじゃないでしょ?」
有家が少し目を見開くと、ニヤッと笑った。
瑞穂は、キョトンとする有明とみずほを交互に見比べる。
(よく似てる)
伏せ目がちでまつげの長い目も、ふわふわした茶色の髪も、そして性格も。
「だからね、正直運命感じたんですよ、僕」
偶然にも自分の妻と同じ名前の女子高生。
その女子高生と付き合う、妻と共通点の多い教師。
偶然にもそのふたりと同じマンションになり、そのふたりが、自分と同じように教師と生徒で恋愛をしている。
とても他人事とは思えなくて、関わりを持ちたくて。
有家がふたりに構う動機はそれだけだ。
有明はそんな有家の心境など知らず、何を企んでいるのかと疑ってばかりいた。
だかとてもシンプルなことだったのだ。
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