50252人が本棚に入れています
本棚に追加
「おいしい」
「や・・・普通のクッキーですよ。
お店で売ってるものとは比べ物にならないですし・・・」
自分もたくさん食べたので知っている。
家にはまだまだ残っている。
「そんなことないよ。今まで食べた中で一番おいしい」
「・・・・・・っ」
瑞穂はまた顔を赤くして俯いた。
ものすごく乙女なことをしてしまったみたいで恥ずかしい。
有明は本当にお腹が減っていたらしく、次々にクッキーを口へと運ぶ。
「そんなに食べたらご飯入らないですよ」
「あ、つい・・・。でもすごく嬉しくて」
もう食べないように袋を閉じると、瑞穂の方を向いてまた笑う。
「え・・・?」
「だってこういうの作ってくれるの、初めてだから。
・・・それに今日だって、いつもは出掛けたがらないのに自分から出掛けたいって言うんだもん」
「あ・・・・・・」
確かに他の生徒や教師がいたら――と日頃出掛けることを、瑞穂は拒んでばかりいた。
単に有明と自分のためだったが、拒んでばかりでは嫌がっていると思われても仕方がない。
「そ、そんな・・・」
「ん?」
「そんなことなんかで喜ばないでくださいよ」
「・・・・・・?」
ほんの些細なことに喜ぶ有明を見ていると、普段いかに自分が何もしてあげられないでいるかわかったような気がして心が苦しい。
ただでさえ、喜ばせようと思ってやったことではないのに。
突然暗くなってしまった瑞穂を見て有明は心配そうにその顔を覗き込んだ。
「瑞穂さん?」
最初のコメントを投稿しよう!