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瑞穂はとっさに頭を両腕で庇って目を閉じる。
そんな瑞穂に伸びてきた有馬の腕を、ひとつの腕が掴んで食い止めた。
有馬はハッと我に返る。
腕を掴んだのは有明。
有明は有馬の腕を掴んだまま、悲しい顔をした。
「裏切るようなことをしてごめんなさい。
僕が口止めしたんです。
だから、殴るなら僕を殴ってください」
「え・・・・・・ぅあ・・・・・・ッ」
そんな有明の顔を見て、有馬の顔がみるみるうちに赤くなる。
すっかり勢いをなくした有馬はストンと椅子に座りなおした。
「あっ・・・有明先生殴るとかできるわけないしっ・・・」
「ありがとうございます」
有明がニッコリ笑いかければ、有馬は顔を緩ませる。
(この差は何・・・。口之津先生にチクってやろうかな・・・)
「有明、アレわざとやってんだろ」
ふて腐れる瑞穂の隣で布津も呆れて見ていた。
有明も椅子に座りなおすと、テーブルに肘をついて顔の前で手を組んだ。
「告白したのは、俺からなんだよ」
雰囲気の変わった有明を、深江と有馬が黙って見つめる。
有明はゆっくりと二人のことを話し出した。
――――いろいろあった。
瑞穂もそれを聞きながら、少し前のことなのに懐かしさを感じる
――有明がくれた一輪の花に顔を近づけるとふわりといい香りがして目を閉じた。
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