群青の空に掛かる白

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 高校1年生――  入学式も終わり、一ヶ月くらいたっただろうか・・・クラスは仲のよい者の顔くらいは覚えたような、そんな感じの時期。 まだまだうわついた空気の中、一番といっていいくらいうわついた男一人。 「待てー!!止まらんかー!!」 目立つオレンジ色の髪を振り乱して、生活指導の怒号から逃げる彼の名は加津佐タケル。 もちろん地毛ではないその頭髪にブチキレた教師に追いかけられていた。 「カンベンしてよー。昨日染めたばっかなんだってー!」 「だから怒ってるんだろうがー!!アホかお前!  入学したばっかりで教師にも上級生にも目つけられるつもりかー!!」 「だぁって俺オレンジ似合うんだもん!」 なんとか教師を撒いた加津佐は偶然見つけた人気のない階段を駆け上がる。 まだ校舎を全て把握していないので、これがどこへと繋がっているのかは知らない。 最上階まで上ると少し湿った暗い空気に、重たげな扉があった。 扉には元々かかっていたであろう鎖がだらんと垂れ、『立入禁止』の看板がぶらさがっている。 加津佐は迷わずその扉に手を掛けた。 ――鍵は掛かっていない。 ガコン、と重たい音がして扉はゆっくり開かれた。 ホコリの積もっていないそのドアノブは、きっと今までも生徒がこっそり立ち入ってきたであろうことがわかる。 「おおっ!」 すぐ目に飛び込んできた光景に感動する。 「こりゃ確かに立入禁止だ」 青空の広がる屋上は頼りない手擦りだけ。 決して広いとは言えないそこは無駄な隔たりのない、自由な空だけが広がっていた。 なんとも年頃の少年達を魅了するには十分な場所だ。
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