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(・・・どうしよう)
助けに行きたいが、加津佐もこれといって強いわけではない。
というか今まで喧嘩なんてしたことがない。
ひとまず今は好機を伺おうと身を潜めて様子を見た。
上級生がヒャハハハとあざ笑う。
有明は初めて眉間にシワを寄せた。
「何だァ?その目つきは。実際痛い目みねーとわかんねーかぁ?!」
そいつらのボスらしき人物が一人、ずんずんと有明に近寄る。
「チッ・・・俺が何したってんだ」
「ああ?!」
独り言のように悪態をつく有明の言葉は、そのリーダーの額にさらに血管を浮かばせる。
(うわわわわっ!何だアイツ!
自殺でもしたいのか?!それともドMなのか?!)
しかし彼が目をつけられる理由は加津佐にも全くわからない。
彼は大人しいし真面目だ。
髪の色素は薄いけれど、他にも染めているヤツはいる。
(今時それくらいでここまで派手にキレるか・・・?)
「わかんねーんなら教えてやるよ!!
テメーには自分に群がる女共の一人でしかなかったかもしんねーけどなあ・・・
テメーが手を出した2年のユミコは俺の女なんだよ!!」
唾が掛かる程に顔を近づけてそのボスは有明に凄む。
(なるほど、女か・・・)
それなら納得がいく。
(えぇ~~。しっかし有明ってヤツも見かけにはよらないなー。
無害そうな顔して、言い寄ってくる女には手出しまくってるってわけか)
これだからモテるヤツは・・・
自業自得だ、と少しだけ助ける気がうせる。
有明はやはり唾が飛んだのか、迷惑そうに学ランの袖で顔をぬぐって一言言い捨てた。
「・・・っていうかユミコって誰ですか?」
「!!」
ブッチン
(・・・う~~わ~~~・・・)
ボスの血管がブチ切れる音が加津佐まで聞こえた気がした。
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