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(すげえ・・・)
有明はヤバい奴だった。
なんとか怪我人が出ることはなかったが、有明と関わるとロクなことはないだろう。
そう考えて加津佐はこのまま息を潜ませていることにする。
有明は数分しばらくその場で上級生達が離れていくであろう時間を待ち、自分もまた連れてこられた道を戻った。
――ようやく帰ってくれるか・・・
ドアの開く音を聞いて、加津佐は大きくため息をついた。
しかし――
「ッラァア!!」
ガキンッ!!
「!!?」
硬い鉄のようなものが床に当たる音。
「・・・チッ、外したか!」
間一髪でよけた有明の目に飛び込んできたのは、先ほど帰ったはずの取り巻き達。
そのうちの一人が、ドアが開いた瞬間、有明めがけてバッドを振り下ろしたのだ。
キィィン・・・
床とバッドがぶつかった音が響く。
どれだけ強い力で振り下ろされたのだろう。
当たり所が悪ければ、それこそ死んでしまう。
「・・・・・・っ」
間一髪でよけたはいいものの、校舎の中へと逃げた有明は見事に狭い場所で上級生に囲まれてしまった。
『ヤバい奴だから手を出せない』なんて、頭に血が上った彼らにそういう考えは浮かばなかったようだ。
「ヒャハハハハ!今度こそ覚悟しろよテメェ!!」
ボスが再び有明を睨み付ける。
不安定な階段で、前も後ろも囲まれた有明は、今度こそはヤバイと、ここにきてはじめて顔色を変えた。
「取り押さえろ!!」
「――――っ!」
「アチョーーーー!!」
ズ ガ ガ ン !!
「・・・・・・・・・ッ
うわああああああああ!!!」
突然の衝撃に、ボスは大きな叫び声を上げて顔から階段を滑り落ちた。
有明がボスをひょいとよければ、反射的に取り巻きまでもがそれを避ける。
まるですりおろし器にかけた大根のように顔面を滑らせたボスは、壁に頭を打ち付けてその場にのびた。
「た、武田ぁ!」
「な、なんだ?!誰だ!!」
数人の取り巻きがボス(武田)に駆け寄り、残りの数人と有明が声のした方を振り向く。
「ヒーロー参上ぅッ!」
ふざけたセリフを言いポーズを決めるオレンジ頭のその人物を見て、有明はさらに困惑した。
(・・・・・・誰だコイツ)
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