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「有明、おまえねー、いつもあんな不利な喧嘩買っちゃってるの?危ないからやめといたがいいよ」
「喧嘩買うっていうな。俺は相手にしてるつもりはないよ」
「それにいくらなんでもやりすぎでしょー。ほんとに落ちちゃったらどうすんの?
アイツら絶対有明のことヤバイ奴って思ってるよ」
「それが目的。そう思わせとけば近づかないだろ」
どうやら有明は今までも似たようなことで喧嘩を売られることがあるらしい。
だからどうりで慣れていたのかと加津佐は納得する。
「俺は普通にしてるつもりだけど、どうやら俺の行動や言動ひとつひとつは鼻につくものらしい」
有明はまるで気にしないというように言い捨てたが、それは加津佐の胸をズキリと痛めた。
「しょうがないなー。
じゃあ次勘違いして文句言う奴がいたら俺が『勘違いですよ』って教えてやるよ!」
「何だそれ。
そもそも喧嘩っ早い奴らが話し合いに応じるかよ」
「だぁって俺もお前も喧嘩できねーもん!」
「・・・少しは強がれよ」
しかし加津佐とつるむようになった有明は、なぜか不思議と周りから喧嘩を売られることが少なくなっていった。
有明に好意をよせる女子達は、有明の雰囲気がやわらかくなったとさらに熱を上げる。
しかしそんなことも、二人の耳には入らない。
二人は自然と初めて会った屋上で一緒にいることが多くなった。
「加津佐はよくこんな汚いとこに寝転がれるな」
「砂は払えばいいんだけどさー。コンクリ固いんだよね。
体育倉庫からマットパクってこようと思うんだけどどう思う?」
「さぁ」
二人を見下ろすように広がるのは、青い空に白い雲。
しかしそんなものは今はどうでもいい。
さわやかな風が体をぬければ眠気が襲い、思わず二人同時にあくびをした。
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