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5
照子には両親がいなかった。存在すら知らなかった。身内はマツとハルだけだった。
毎日マツとハルを散歩させ、暗くなりはじめたら家に帰る…それの繰り返しだった。
そんな日々だった。
ボーンボーン…‥
6時を知らせる鐘が鳴る。
もうすぐ暗くなる‥。
いつもは鐘が鳴るころには帰っていた。しかし、今日は何故か足が動かなかった。
にげだせないニゲダセナイ逃げ出せない‥…‥
そんな言葉がふと脳裏をよぎった。
夜は毎日くる。真夏の暑い日も雪のふる寒い日も…。
地球が傾き、自転し、太陽の周りを公転している限り、春夏秋冬、朝昼晩、
それぞれの、その時からは逃げ出せなかったんだ。
照子は気づいていなかった。
自分はわがままで、嫌なことからすぐ逃げる。
逃げることばかり考えて、なにをしたらいいのか分からなくなっている。
分かろうとする感情さえだすことが出来ない…‥。
照子の心は真っ白だった。
照子は暗闇にのまれながら、うずくまっていた。
‥泣くことはできなかった。
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