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「……これ、なに?」
パチクリと開いた目は瞬きを数回し
不思議そうな表情で
先生はそう俺に訪ねた。
「え?手錠だよ先生」
そんなのも知らないの?
とでも言うかのように
先生の目を見て首を軽く傾げて答える。
「いやいや、そう意味ではなく」
「何でこれを俺につけてるの?
って聞きたいの?先生」
目を細め広角を上げながら
優しく聞いてあげると
先生はそうそう!
と勢い良く首を縦に振った。
「ふふ。まだ知らなくていいよ
その方が…――、」
言葉を止めて少し目を伏せる。
「その方が…なんだ?」
続きが気になるのか
俺が呟いた言葉を
繰り返し問いかけてくる先生。
その方が―
「ううん!…何でもない。」
―貴方の心に
深いキズを残す事ができるから
貴方の一番愛する人が俺で無いなら
俺は貴方の一番憎む人になりたい。
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