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それを、少年は紙一重でかわす。
巨体からは想像しがたい俊敏さに、少年は顔をしかめる。
「近距離では分が悪いな……」
二撃目を避けて後退し、距離をとり。
そこで初めて、少年は守勢を解いた。
「さぁ、こちらの番だ」
眼前には、この街を滅ぼしたであろう巨大な竜。
だが、少年の顔に浮かぶのは恐怖では無い。
それは……笑みだ。
畏れを知らぬ、狂気の笑みだ。
「古の契より、我が元に来たれ──」
少年が唱えると、黒い式陣が宙に形成されてゆく。
幾何学的な模様が描かれたそれから、少年は何かを抜き取る。
それは巨大な鎌だった。
刃は、使い手と同じ黒。
相当な重量がある筈の大鎌を、少年は軽々と扱ってみせる。
「精霊よ、俺に楯突く愚者達に──」
紡がれる術に応え、更に黒く染まってゆく刃。
小年はゆっくりと、切っ先を竜に向け──
「闇より深き、真の絶望を」
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