プロローグ

5/5
前へ
/5ページ
次へ
 それを、少年は紙一重でかわす。  巨体からは想像しがたい俊敏さに、少年は顔をしかめる。 「近距離では分が悪いな……」  二撃目を避けて後退し、距離をとり。  そこで初めて、少年は守勢を解いた。 「さぁ、こちらの番だ」  眼前には、この街を滅ぼしたであろう巨大な竜。  だが、少年の顔に浮かぶのは恐怖では無い。  それは……笑みだ。  畏れを知らぬ、狂気の笑みだ。 「古の契より、我が元に来たれ──」  少年が唱えると、黒い式陣が宙に形成されてゆく。  幾何学的な模様が描かれたそれから、少年は何かを抜き取る。  それは巨大な鎌だった。  刃は、使い手と同じ黒。  相当な重量がある筈の大鎌を、少年は軽々と扱ってみせる。 「精霊よ、俺に楯突く愚者達に──」  紡がれる術に応え、更に黒く染まってゆく刃。  小年はゆっくりと、切っ先を竜に向け── 「闇より深き、真の絶望を」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加