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魔法学園、教室棟屋上。殺風景な赤茶コンクリートの地面に、浅い格子状の線が入ってる以外は、何も無い場所。
そこに一人の人物が、飛び出した立方体の校舎のドア──屋上の入り口から入ってくる。
「あー、まだ痛え……引き際ミスったか。ユーラにめちゃくちゃ怒られ──っと、流石だな。仕事が早い」
頭を掻きながら、地肌に直接赤アロハを着たトビは、自分の後に開いたドアを見て呟く。
怠そうに空を一瞥したと同時、屋上に生徒が四人入ってきた。
「お。居た居たトビさん」
「おう、早かったなお前ら。もうちょい掛かると思ってたんだが」
時計塔を見上げながら、トビが呟く。屋上とはいえ、やはり時計塔の頂上まではまだかなり高かった。
「……なぁトビさん。学園長の暴走はあの後どうなったんだ?」
「安心しろ、教室一個壊れただけだ」
「それは安心出来るレベルなんですね……」
「アタシらのカバン、死んだね多分」
「トビ兄ぃは大丈夫だったんですか?」
「ああ。本気出して止めた」
「トビさん。アンタ自分からスイちゃんに兄と呼ばせただろ」
「男のロマンだ」
「同感だけどさ」
「カイル君は同感なんだ……」
一通り挨拶を交わして、トビは屋上に座り込む。それに合わせるように、四人もその場に腰を下ろした。
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