─君が為─

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 ああ、本当に。  どうしようもない野郎だった。  使命を決めて、約束をして。覚悟を持って、割り切って。色んな人に出会って、様々な覚悟を知って、多種多様な信念を目の当たりにして、数々の対立を経て。  自分の道を自分なりに定めたつもりだったのに、挙げ句の果てがこうだった。  異世界なんて場所に来て、刀なんて物を振り上げて。それでも日常を取り戻す為に始まった新しい日常。  なんで俺は、この場所の輪に入っちまった。孤高でもなんでも貫いて、ひたすらに目標だけを見つめていりゃあ──  アイツにだって出会わず、知らないところで全部終わってたかもしれないのに。 「……なんて」  なにをニヒルを気取ってるんだか。都合良く誤魔化してんじゃねーよ。格好をつけて、一体誰に見せるつもりなんだっての。  幸せだった。  感謝すらしてる。  後悔なんてあるわけが無い。 「死ぬ覚悟とか──出来てるかな?」  リトは冷めた目で俺を睨む。騙されたんだから当然だ。昔の家族すら騙して目的を果たすとか、最低だな俺は。 「なに言ってやがる。死ぬ覚悟なんてあるわけないだろ。未練がましくいつまでだって、醜く足掻き続けてやるよ」 「格好悪いなシグレ。あの女の為に死ねるから、お前はそこに立ってるんだろ?」 「違うな。俺が死んだら、誰がアイツを守るんだ。悪いがその役割は死んでも譲る気はねーよ」  誰かの為に死ぬなんてのは、正義の味方の専売特許だ。ただ凡庸なだけの俺は、誰かの為に他を見捨てる野郎なんだよ。 「……そっか。どうにもオレは勘違いをしていたらしいね。……お前はレイン、シグレなんかじゃなかったんだ」  少しの沈黙のあと、次第にリトは笑い始める。叫ぶようなその笑い声は、否定しなかった俺を隠した。
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