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予想通り、その日の体育は暑かった。 それこそ汗がだらだら止まらないくらいに。 おまけに今日の体育は外で体力測定だ。 そして今は目下ランニング中である。 いや、ランニングペースの千五百だ。 はっきし言ってだるい。猛烈にだるい。この上なくだるい。 容赦なく灼光を照り付けてくるあの太陽が恨めしい。 「……あつい」 「何を今更」 いつの間にか隣に並んでいた高志が声をかけてきた。 「……そこ、……独り言に、ちゃちを入れない」 「息切れしてるねー、かなり」 そうゆうお前は何故に息一つ乱していないのか逆に聞きたい。 普通疲れるだろもう二百は走ったぞ? ……なんか、自分で言ってて悲しくなるな……。 「まだ走り始めたばっかじゃん」 笑いながら言ってくれる。この体力デブめ。自慢か? 無駄にぷよぷよしやがって。 「……だいたい、男子だけ外、ってのはどうなんだよ……、差別だ……」 女子は体育館でバスケらしい。なんで。 「そりゃ、女子は少し前に体力測定終わってるし」 そういえばそんなこともあったかな。興味がないからすぐに忘れてしまった。 黙ってしまった僕にかわり今度は高志が話しをする。 「久遠さんとか今頃活躍してるんじゃない?」 気になる? と横にでかい友人は言った。 「………………」 気になるに決まってる。 口でこそ言わないが、僕はすでに久遠さんのことが気になってしょうがないのだ。 ダサい印象しかなかった彼女だが真実を知った僕には本領発揮の今日の彼女だけはなんとなく見ておきたい。なんとなく。 高志のいうとおり、きっと今頃体育館は彼女の一人舞台と化しているだろう。 「じゃあ、俺はもう行くから」 残り四百、といったところだろうか。 高志は他の皆のようにスパートをかけた。ちなみに僕にはスパートをかけるだけの体力がもうないので必然と置いていかれる形になる。 遠ざかっていく丸い物体を眺めながら、僕はゆっくりと倒れた。
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