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「大丈夫?」
全く心配してない様子で高志が声をかけてくる。労いは言葉だけですか。
「……大丈夫じゃない」
何だよ熱射病って。何か倒れたし。恥ず。
高志が僕の体を支えつつ笑いながら話しかけてくる。何か文句でもあるのかよちくしょう恥ずかしい。
「でもさ、ただの熱射病で良かったじゃん。皆けっこう心配してたよ?」
……そうだったっけ?
何か軽く笑われてた気がするんだけど。
先生は先生で保健室にでも行ってこいの一蹴。
日は高いし。
暑いし。
なんか理不尽だし。
格好悪いし。
僕は隣の高志に聞こえないように小さくため息を吐いた。
「あ」
同時に、高志が小さな呟きを漏らす。
どうした、と聞く前に横から黄色い歓声が聞こえてきて、すぐに思い至った。
女子は体育館でバスケらしい。
女子といえば久遠さん、バスケといえば久遠さん。
つまり、今は地味で目立たない久遠さんが唯一光輝く瞬間。
となれば……。
「高志」
「うん?」
「覗くぞ」
覗くしかなかった。
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