5/11
前へ
/30ページ
次へ
「大丈夫?」 全く心配してない様子で高志が声をかけてくる。労いは言葉だけですか。 「……大丈夫じゃない」 何だよ熱射病って。何か倒れたし。恥ず。 高志が僕の体を支えつつ笑いながら話しかけてくる。何か文句でもあるのかよちくしょう恥ずかしい。 「でもさ、ただの熱射病で良かったじゃん。皆けっこう心配してたよ?」 ……そうだったっけ? 何か軽く笑われてた気がするんだけど。 先生は先生で保健室にでも行ってこいの一蹴。 日は高いし。 暑いし。 なんか理不尽だし。 格好悪いし。 僕は隣の高志に聞こえないように小さくため息を吐いた。 「あ」 同時に、高志が小さな呟きを漏らす。 どうした、と聞く前に横から黄色い歓声が聞こえてきて、すぐに思い至った。 女子は体育館でバスケらしい。 女子といえば久遠さん、バスケといえば久遠さん。 つまり、今は地味で目立たない久遠さんが唯一光輝く瞬間。 となれば……。 「高志」 「うん?」 「覗くぞ」 覗くしかなかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加