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次に彼女にあったのは、その日の本屋で、だった。
僕はいつも週に一度本屋へ通い、その時にその週に出た週刊誌を全て読む。僕は掲載されている漫画は全部読むので、それだけで二時間はかかる。
自転車で徒歩の彼女を抜いたはずなのだが、この本屋は学校からそう遠くないので僕が漫画を読んでる間に彼女はこの本屋に着いてしまったのだろう。
彼女はクロブチのぶっとい眼鏡をかけていた。色気の欠片もなかった。
だが、自分に自信のない僕とは違って彼女は誰かの視線に怯えるでもなく真っ直ぐ前を見て歩いていた。
意外だった。
なんとなく、彼女は僕と同じように右に出る者がいないぐらい地味でダサくてつまらなそうな人間に見えたので、てっきり僕と同じように見ず知らずの他人のあるはずもない目線に怯えてビクビクしていると思っていたから。
意外だった。
彼女は本屋に入ってすぐに僕のいる方に歩いてきたので、無遠慮にジロジロ見ていた僕に気付いて何か言いにきたのかと思ったが、しかし彼女はまるで僕の存在なんて無いかのように横を素通りしていった。
ほっとするのと同時に、彼女が向かった先を目で追って驚いた。
彼女が行った先は、ピンク色のいやらしい背表紙が所狭しと並ぶこの本屋随一のエロ本コーナーだった。
女の子がなんであんな場所に、と思ったが考えてみれば彼女も地味でダサくてつまらなそうな人間ではあるが一思春期女子高生であることは違いないので、そうゆうことに興味が無いはずもなかったのだ。
僕は自分の認識を改めると共に、彼女の行動を見守った。
いつの間にか、自分が何しに本屋へ来たのかその目的を忘れてしまっていた。
女の子がエロ本の棚を前にして真剣にどの本にしようかと吟味するどこか背徳的な雰囲気に、僕は圧倒されていたのだ。
やがて彼女は気に入ったものがあったのか、一冊の恥ずかしい表紙をした本をとるとレジに真っ直ぐ持っていった。
その足取りは本屋に来た時と全く変わらず冷静で、僕はその時おかしかったのかもしれない。
まさか、彼女を見て綺麗だ、なんて思うなんて。
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