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「なんでって、あんな名前だし」
「……ん、まあ、そうだけど……それで?」
言葉にしなかった部分が伝わらなかったのは幸いだった。
僕は言葉を濁して先を促す。
彼女の中学時代を知りたかった。特に理由は無い。
高志は素直に答えてくれた。
「それでって、別にそれだけだよ?」
なんて素直な奴なんだろうなぁ。イラつくぜ。
「そうか。で、久遠さんは何部だった?」
少し直球だったが、仕方ない。僕は昔からこうゆう喋りが苦手なんだ。
「女子のバスケ部だよ」
「そりゃまた、意外な」
てっきり文化系かと思っていた。
メガネだし。地味だし。ダサいし。人のこと言えないけど。
……なんで綺麗だ、なんて思ったんだろ……?
「意外っていえば意外かなぁ確かに。久遠さんレギュラーだったし」
「マジで!?」
……なんか、彼女に神秘さを感じた理由が、なんとなくわかった気がした。
「キャプテンだったし」
返す言葉もなかった。
地味でダサくてクロブチメガネな彼女は、元バスケ部でキャプテンで輝いていた。
頭の中で想像してみる。
メンバーの皆をまとめて敵陣のゴールを真っ直ぐ見つめ、毅然とした姿でコートに立つ彼女。
格好よかった。
どうしようもなく格好よかった。
他人の目に怯えることしか出来ない僕なんかを簡単に遠ざけてしまうくらい、彼女は輝いていた。
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